日本トルコ文化交流会 TURKEY JAPAN CULTURAL DIALOG SOCIETY

May21

今回は日本におけるトルコ近代史研究の権威、東京外国語大学大学院 教授の新井政美先生に、現代トルコにおけるイスラームと近代化の関係、その中に顕在するオスマン帝国の遺産についてお話しいただきました。

後期のオスマン帝国が必死で西欧化することで生き残りを図ったかのように語られることも多いのですが、先生は、オスマン帝国は、外部の良い物は積極的に取り入れ、それをイスラームの枠組みの中で合法化するという寛容さをそもそも初めから持っていたと、様々な資料や例から示されました。だからこそ、多民族多宗教の住民を率いてあれだけの国土を長期にわたって維持することができたのです。
しかしその寛容さと柔軟さがナショナリズムの時代に突入して失われ、オスマン帝国が崩壊してトルコ共和国となってからは、脱亜入欧、ナショナリズム、政教分離という国是などが絶対視され、多くの矛盾を抱えることになりました。
しかし、近年になり親イスラム勢力が力を持ち始め、トルコはトルコ・イスラームの枠組みの中で再度、かつての柔軟さ、すなわちオスマンの遺産を取り戻し、輝きを取り戻そうとしています。
このトルコの持つ、近代化あるいはグローバル化のなかで抱えた矛盾を修正する能力は、我々にとっても学ぶべき点なのではないか、と講演を結ばれました。


講演者プロフィール:

新井政美(あらい・まさみ)
一九五三年生まれ。東京大学文学部卒業。
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。トルコ近代史を専攻。
著書に『青年トルコ時代のトルコ・ナショナリズム』(Leiden/Istanbul)、『トルコ近現代史――イスラム国家から国民国家へ――』(みすず書房)、『オスマン帝国はなぜ崩壊したのか』(青土社)、『イスラムと近代化――共和国トルコの苦闘』(講談社選書メチエ)、『父は信長』(講談社/学陽書房)などがある。

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