日本トルコ文化交流会 TURKEY JAPAN CULTURAL DIALOG SOCIETY

May12

2014年2月、明治学院大学の15人の学生さんと教授お2人が、nittoKAIスタッフと共にトルコを訪問し、トルコ最大の災害支援NGOキムセヨクム財団と協力し、トルコに避難しているシリア難民が滞在する施設でボランティア活動を行いました。

ご参加された教授と、学長先生、副学長先生より感想のレポートを頂きましたので掲載いたします。


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トルコ親善ボランティアミッションの目的と意義
                                     学長 鵜殿 博喜

 今回のトルコ親善ボランティアミッションには3つの大きな目的があった。一つは、これまで本学が協定を結んできた海外の大学とは宗教的文化的背景が異なるトルコの大学との交流のチャンスを探ることであり、もう一つは、日本とも歴史的に関係が深く、東日本大震災の折も海外のボランティアとしてもっとも早く現地に入ったトルコのボランティア団体と交流をもち、本学の学生たちがトルコで実際にボランティア活動に参加し、それをとおしてトルコという国を肌で実感してもらうことであり、三つ目は、トルコという国の現実を少しでも体験し、その歴史と文化と社会をささやかであっても現地で学ぶということであった。
 この三つの目的は十分に達せられたと思う。大学との交流という点については、私たちは財団立のスレイマン・シャー大学と国立のイスタンブール工科大学を訪問したが、スレイマン・シャー大学では、事前の打ち合わせもしないうちにすでに協定書の原案ができており、私たちはこれからこの原案を検討すればよいだけになった。イスタンブール工科大学もまたとても友好的で、しかも工科大学とはいえ、他の人文社会学関係の領域もカバーしており、日本語の授業もおこなわれているとのことで、協定を結べる見通しがたったと言えるだろう。
 さらに、両大学とも学生たちが本学の学生とすぐに打ち解けて、音楽や踊りのパフォーマンスをとおして親しく交流できたこともたいへんよかった。これがまさに親善ミッションである所以なのである。
 このように、ハードスケジュールのなか、私たちの主たる目的は申し分なく果たすことができたと言えよう。また、イスタンブールから離れて、イズミールというトルコ第3の都市にも足を伸ばし、古代遺跡やキリスト教関係の遺物の見学などができたことも有意義であった。それからなにより、イズミール市内にある多文化交流センターを訪ね、センター理事長をはじめ地元の学生たちとの交流もできたことは予想外のことであった。このセンターは宗教や文化の違いを超えて交流することを趣旨としており、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が互いに尊重し合い共生することをめざしている姿勢に深く感銘した。
 今回のトルコ訪問は、準備の段階からトルコでのプログラムまで、日本トルコ文化交流会(nitto KAI)のエブル・イスピルさんとアリ・ビンゴルさんに、たいへんお世話になった。このお二人のサポートがなければ、今回のトルコ訪問プログラムはなかったであろう。ここに深く感謝する次第である。


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海外交流の地平

                                         副学長 吉井 淳

トルコ親善ボランティアミッションでは、14名の学生と共にトルコのボランティア団体であるキムセヨクムの協力を得て、トルコ国内で難民支援のボランティア活動を行った。ボランティア施設での配給品の仕分けや衣類の箱出しの手伝い、支給品の制作などそれぞれの学生が現地のボランティアと協力して作業をこなしていた。その間、学生達は作業自体よりも現地のボランティアの人たちとのコミュニケーションの難しさに直面した。言葉が十分な意思疎通の手段とならない状況で、コミュニケーションの難しさを認識するだけでも大変貴重な体験だが、それを知恵と工夫で上手に克服していた。一緒に行った学生のポテンシャルの高さを改めて認識し、明治学院大学の学生の資質と能力に今後も大きく期待できると確信し、このような機会を学生に提供する重要性を改めて認識した。
明治学院大学は世界15ヵ国と地域に30校の協定校を持ち、長期・短期の留学プログラムを運営しているが、いわゆるイスラム圏の国とは学生を派遣する留学プログラムの基礎となる協定を未だに取り交わしてはいない。世俗主義をとるトルコが典型的なイスラム国家かどうかは別にして、トルコでの活動は日ごろ日本ではなじみの薄いイスラム文化との接触の機会であり、学生達にとってはとても貴重な体験となった。今後トルコの大学と協定を結ぶことが出来れば、宗教、文化的に今まで直接に体験の機会の無かった文化圏の国との関係が構築でき、それは協定校一校のみの関係に限定されず、その協定校を入り口として、その地方・地域に広がることが可能となり、さらなる体験の可能性を意味する。
先日サウジアラビアから国費で日本に留学しているサウジアラビア人学生の卒業式に出席する機会があった。日本各地の大学で学んだ30名を超える学生が、希望に満ちた表情で卒業式に臨んでいた。彼らは帰国し将来様々な分野での活躍が期待されている。彼らは日本で外国人留学生として特別な待遇を受けることは無く日本人学生と同じ教育を受け、専門の知識・技能のみでなくむしろ日本の文化・社会を理解することが期待されている。今後世界で活躍するためには異文化理解は欠かせない条件である。
トルコにおける今回の活動が、明治学院大学の海外交流の枠組みを大きく発展させる端緒となることを期待している。


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「文明の衝突」ではなく、対話で共通性を見出す

                        ボランティアセンター長 原田勝広

今回のトルコ親善ボランティアミッションの目的はふたつあったと思う。東西文明の接点、トルコの歴史と文化を理解し大学間交流の糸口をつかむこと。いまひとつはイスラム世界のボランティアを知り、トルコ最大の非政府組織(NGO)キムセヨクム(誰かいませんか、の意)の活動に参加することだった。イスラム圏の大学との交流は、鵜殿学長が述べられている通り展望は明るい。ボランティアについては驚きの連続であった。キリスト教世界では、明治学院大学のDo for Others に象徴されるチャリティ(慈善)の精神が尊ばれるが、イスラム教にもザカート(喜捨)があり、その共通性を知ることができた。キムセヨクムという名前は1999年、同国を襲った大地震で倒壊したビルに生き埋めになった被災者を探すため、皆で「誰かいませんか?」と声をかけながら活動したことに由来する。
日本や欧米ではNGOといえばプロの援助者で、基本的に給与をもらって活動する専従スタッフであるが、キムセヨクムでは専従スタッフはわずか300人。活動の中心は10万人に及ぶボランティアだ。ほかに本来の仕事を持っている人たちで、紛争で難民が発生したり、自然災害が起きた場合は、職場を休んで現場に駆けつけるのだという。医師、看護師、エンジニア、運転手など専門知識や特殊技術を持った人たちが集まるわけだからいい支援ができるわけである。キムセヨクムは東日本大震災が起きてすぐトルコを発ち、3日後には東北で支援をしてくれた。心からお礼申し上げたい。
そのキムセヨクムのユニホームを着て活動に参加した学生は貴重な経験を積んだ。普段、明学ボランティアセンターの様々な活動分野で活躍している学生が多かっただけに、スムーズに動いていたのが印象的だった。私自身、多くのことを学んだが、例えば、提供する衣料が新品だったのは意外だった。衣料品メーカーが寄付してくれた新品のものを事務所にブティックのように並べる。そこに必要としている人が訪問する仕組みだ。いま支援を必要としているのはシリア難民。大半は国境沿いの難民キャンプにいるが、一部は知り合いや親せきを頼ってトルコ国内各地に入り込んでいる。学生はキムセヨクムが提供する文房具をシリア難民の子どもたちが学ぶ学校で配った。また、シリア難民やトルコ人の貧困家庭の家を一軒一軒訪ね、オリーブ油や米、豆、砂糖など10種類以上の食品がの入った段ボールをトラックで配って歩いた。ある家では、奥さんが「支援されて恥ずかしい。私も支援する側に回りたかった」と大粒の涙を流した。心が痛んだ。
短期間であるが、ボランティアの必要性、果たす役割の大きさを再確認できたことはよかったと思う。イスラムといえば、原理主義のことが頭に浮かぶ人もいる。サミュエル・ハンチントンは西欧と非西欧の対立と相互緊張を予測し、「文明の衝突」を書いた。しかし、トルコ親善ボランティアミッションで、私たちが感じたのは、イスラム教とキリスト教の共通性である。対立する面よりも「文明間の対話」を促進し、多文化共生を図ることの重要性を認識できた。両文明は仲良く共存できるし、また、そうしなければならない。そのためにも、このミッションの意味は大きい。旅が終わって、そう感じている。


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新たに始まるトルコとの大学間交流

                                     学長室長 神田 良

現在、国際化をさらに拡大・充実させていくとは我が校の大きな課題である。これまですでに欧米、アジアの国の大学とは多くの交換留学協定を結んできた。しかし、世界経済の動きを見ると、これらの地域だけでは不十分であることは歴然としている。既存地域での拡充を図ることはもちろんのこと、それ以外の地域に向けても交換留学制度を拡充していくことが求められている。
今回幸いにも、世界経済の中でますますその重要性を高めてきているトルコとの間で、交換留学を進めていく機会を得た。世界で最も親日的な国と言われるトルコの大学だけあって、我々を迎え入れて下さった大学では、大学執行部だけでなく、学生も我が校との交流に積極的な姿勢を見せていた。日本の経済ばかりでなく、文化や歴史など広い範囲にわたる興味を持たれていたことが印象的であった。
このミッションでは、2大学との間で、交流に向けて動き出すことで合意を得た。一つはイスタンブール工科大学(Istanbul Technical University)で、同国の国立大学の雄である。その名が示すとおり、工科系大学であるが、伝統音楽に関する学部などもあり幅広い領域をカバーしている。日本語を学んでいる学生もいて、本校との交流が同校の日本語教育にさらに貢献できるものと確信でき、両校の学問的な発展にも寄与できると思われる。
もう一つの大学は、新設大学である。トルコでは、国立大学と財団による大学の2種類しかないといわれるが、提携校スレイマン・シャー大学(Suleyman Sah University)は後者の財団立大学である。国際的な人材を育成するのが設立目的であり、そのため講義はすべて英語で行われている。また、海外からの留学生を多く迎え入れていて、校舎の新しさと新しい人材育成に向けた意気込みが伝わり、活気に満ちた大学である。人文及び社会科学部、経営学部、外国語学部といった社会科学系の大学であり、我が校との学部構成上の適合性が高いところである。
世界は大きく変化している。とりわけ、BRICsについで、注目を浴びているVISTAと呼ばれる国の一つであるトルコとの交流は、世界の変化の潮流に応じて我が校の国際化をさらに進展させる一助となることが期待される。

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