
世俗社会における宗教回帰―トルコと中国の事例から―
9月15日に、日本トルコ文化交流会と東京国際大学国際交流研究所の共同開催で、中国とトルコから講師をお招きし、公開講演会を開催しました。
連休の最終日にもかかわらず、多くのご参加を頂き、講演会終了後の懇親会ではトルコ料理を食べながら交流を深めて頂きました。
【担当者名と発表テーマ】
1 アドナン・アスラン教授
スレイマン・シャー大学(トルコ・イスタンブル)人文社会学部長
発表テーマ「トルコにおける宗教多元主義と新たなイスラーム運動」
”Religious Pluralism and Islamic Movement in Turkey”
2 哈宝玉(Ha Baoyu)教授
中国陕西师范大学中国西部边疆研究院中国陕西师范大学教授
Northwest National Research Center at Shaanxi Normal University
発表テーマ「中国における回族の立場とイスラーム研究の今後」
”Muslim Situation and Islamic Studies in China”
【講演の要旨】
どの宗教も社会との関係性を保ちながら、社会の変動や近代化、グローバル化に対応して多様な様相を示しています。とくに、精神性と日常性が不可分の形態をもつイスラームでは、信仰生活は社会生活そのものであることから、イスラームは社会の多様性にあわせて変化をしてきました。ここ2,30年間のイスラーム復興運動による政治的宗教運動の激化によって、イスラーム研究では政治的視点が強調され、テロや紛争をテーマとする研究が大勢を占めていますが、最近の民衆運動においては、政治的イスラームは影を潜め、普通の市民が主役となって社会変革が起こされている例がみられます。
本講演会では、これまで十分に研究されなかった「市民宗教」としてのイスラームが担う新たな役割と課題を、イスラーム国でありながら世俗主義を国是とするトルコと、イスラーム教徒が回族と呼ばれ、少数民族の一翼を担う中国の事例についてご講演をしていただきます。
アドナン・アスラン教授は、宗教多元主義の専門家の立場から、トルコにおける民衆的な宗教回帰運動と、世界的に拡大したヒズメット運動との関連と、将来像について、講演をしていただく予定です。特に非政治的な運動として展開しているヒズメット運動が世界各地で大きな成果をあげる一方で、トルコ国内では、政権与党による締め付けが厳しくなっていることを、取り上げて、世俗社会におけるイスラームの民衆運動の本質について、解説をしていただきます。
中国の哈宝玉教授は、現代中国のイスラーム、及びイスラーム教徒の現状と信仰と、さらに将来像について説明をしていただくとともに、自身も回族である立場から中国のムスリムの将来像を語っていただきます。特に、ウィグル自治区などでのイスラーム教徒による反政府活動と、回族の活動との対比を検討しながら、解説をしていただくことは、現在の中国ムスリムを理解するうえで重要な点です。