日本トルコ文化交流会 TURKEY JAPAN CULTURAL DIALOG SOCIETY

May07

イスタンブール・サミットに参加して
大崎麻子(特定非営利活動法人 Gender Action Platform アドボカシー担当)

 2016年5月7,8日の2日間、タイのバンコクで開催されたイスタンブール・サミット2016「Reconsidering gender eq1uality and peaceful societies(ジェンダー平等と平和な社会を再考する)」に出席しました。暴力過激主義や宗教原理主義が台頭し、テロや紛争が頻発する今、国際社会では「平和と安全保障」の問題が非常に活発に議論されています。今回のイスタンブール・サミットの議論の柱となったのは、「安全保障理事会決議1325号:女性、平和、安全保障アジェンダ」と「持続可能な開発のための2030年アジェンダ:持続可能な開発目標(SDGs)」という2つの国際社会共通の行動枠組みでした。2日間を通して、平和、安全保障、持続可能な開発を「ジェンダー」や「女性」という視点から包括的に捉え直し、今、何が起こっているのか、国際社会が連帯して何をすべきなのかということが話し合われました。
 
1日目は、

第1部「文脈設定:持続可能な開発と平和構築を関連づける」
第2部「ジェンダー平等と女性・女の子のエンパワーメント」
第3部「女性、平和、安全保障」
という3つのパネル・ディスカッションが順番に行われ、専門家や実務家からの現状報告や問題提起がありました。特に印象的だったのは、紛争予防・紛争解決といった「紛争・対立」を前面に出したアプローチではなく、「平和な社会づくり」(=誰をも取り残したり排除したりしない、包摂的な社会づくり)というアプローチへの移行が重要であるという議論が進んでいるという報告、過激暴力主義や宗教原理主義だけではなく、先進国を含む世界各地で家父長制への回帰を標榜する動きが活発化しているという指摘、さらに、従来の「国家を中心とした安全保障」から「人間に主眼を置いた安全保障」へパラダイム・シフトをしていかなければならないという提言が印象的でした。アプローチやパラダイムが一夜にして変わるということはありませんが、過去の歴史を見ても、時代に合わせて変化は起こります。グローバル・レベルや国レベルでジェンダー平等の推進に取り組んでいる人たちが、現状を認識し、連帯・団結しながら、議論や試行錯誤を積み重ねていくことで、少しずつ変化を促すことが重要だと改めて思いました。
 
私は第2部のパネル・ディスカッションに登壇しました。テーマは、女性のリーダーシップと意思決定への参画の重要性です。世界中の女性・女の子の生活や人生がより良いものになるような環境を創るためには、「持続可能な開発目標」と「女性、平和、安全保障アジェンダ」を国レベル・草の根レベルで実行していかなければなりません。そのためには、女性たちがあらゆる意思決定過程に参加し、意見を述べ、それが開発や平和への取組に反映される必要があるということを、これら2つのアジェンダが国際社会で採択されるに至った経緯や、実施状況に関する調査を踏まえてお話ししました。1990年代の開発支援に対するアプローチの変遷や、冷静終結後に広がった紛争・内戦では、民間人が直接的なターゲットになり、特に女性に対するレイプが戦術・兵器として使われるようになるなど、紛争形態の変化がイスタンブール・サミット2016のテーマである2つの国際枠組みの策定に繋がったこと、また、2015年に策定された持続可能な開発目標(SDGs)は、時間をかけて世界中の女性団体を含む市民社会組織を巻き込んで議論をし、課題設定をしたので、「差別の撤廃」「暴力の撤廃」「無償ケア労働の負担の軽減・再分配」「意思決定における女性参画の推進」など、男女格差や不平等の根幹にあるジェンダー問題がしっかりと位置づけられていることなどをお話しました。さらに、実施に向けて一番重要なのは、女性のリーダーシップと意思決定への参画だということを提言しました。コミュニティや国のレベルで確実に実行できるかが問われています。女性が政治に参画し、法律や政策や予算分配(財源確保)の意思決定にしっかりと関与することで、アジェンダの達成に向けた具体的な行動が可能になるというお話をしました。また、イスタンブール・サミットのようなグローバルな場では、女性のリーダーシップの重要性を国際社会に向けて発信していくこと、取組の事例や教訓を共有し合い、共に学んでいくような仕組みが重要だという指摘もしました。

 2日目は、アメリカ、バングラデシュ、ラオスなどの国会議員のラウンドテーブルと、一般参加者の分科会が同時並行で行われました。
 分科会は、
①「女性の完全かつ効果的な参加と平等なリーダーシップ機会」
②「女性と女の子に対するあらゆる形態の暴力の撤廃」
③「良いガバナンスと法の統治」
④「紛争時の女性の人権の保護と推進」
⑤「紛争予防のあらゆる側面における女性の参加」
の5つのテーマで行われました。私は「紛争時の女性の人権の保護と推進」に参加しました。タイ、カンボジア、ケニア、フィリピン、インドの代表者が参加し、活発な意見交換が行われました。要点をまとめ、締めくくりの全体会合でグループを代表して以下のように発表しました。

「紛争中は、医療や教育や水などの公共サービス、警察、司法などが機能しなくなり、女性と女の子たちは危険な状況に置かれ、性暴力や性的搾取、人身取引・誘拐、家庭内暴力といった人権侵害に合いやすくなります。被害を受けても、警察や司法が機能していない、婦人科やメンタルケアなどの医療サービスがストップしていることが考えられ、十分な対応が取れないことが想定されます。解決策としては、平常時からコミュニティの男性や男の子に女性の人権を尊重し、ジェンダー平等を価値規範とすることを教育しておく、また、避難所や難民キャンプでは、女性や女の子が性的サービスの見返りに水や食糧など家族の生活必需品を入手するようなことが起きないように、生活必需品の供給を徹底して行うこと、リプロダクティブ・ヘルス(女性の性と生殖の健康)に関するサービスを提供する、性暴力や誘拐、感染症を防ぐために安全で清潔なトイレやシャワーを設置するといったことが考えられる」
 2日間を通して、世界各地から来た研究者、実務家、活動家の女性・男性と交流することができ、多くの学びがありました。また、文字通り、命がけで女性・女の子の人権を守り、より平和な社会を創っていくために活動されている方々のエネルギーに、わたし自身も感化され、充電して帰国しました。会合で得た知見や情報を大学での授業やNGO・メディアでの活動を通して日本国内に還元してきたいと思っています。このような貴重な機会をいただき、nittoKAIの皆さまには心より感謝申し上げます。ありがとうございました!
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堀内光子(公益財団法人アジア女性交流・研究フォーラム理事長)


ジャーナリスト・作家財団(JWF)女性プラットフォームが主催、AU・タイ達成研究所(TCI)タイマヒドン大学子ども・家族発展国家研究所等との共催で、5月7-8日開催された「イスタンブールサミット2016年:ジェンダー平等と平和な社会を再考する」に出席しました。会議には、33カ国、約300人が、多くは女性ですが、参加しました。SDGsがスタートした今年に、平和と開発を統合して議論する、タイムリーで、有意義な会合に参加の機会をくださった、日本トルコ文化交流会に、お礼申し上げたいと思います。本会議では、最後に採択された宣言で、持続可能な平和のために、「女性の視点の組織的統合」が勧告されましたが、このことが様々な機会に繰り返し訴えられ、政府だけでなく、私たち市民社会組織もより一層活動を強化する必要があるとの認識を新たにした貴重な会合でした。
1日目の本会議では、出席したNGOや国際機関は、3分間のスピーチを行うことでき、私は、SDGsの1目標である、「ジェンダー平等と少女のエンパワーメント」に関するスピーチを行い、会議にささやかですが、貢献できたことを嬉しく思っております。ここでは、ジェンダー平等に関しては、女性の人権、なかんづく、国連女子差別撤廃条約の完全実施の重要性を訴え、ポジティブアクションの強化の必要性を指摘しました。少女のエンパワーメントに関して教育が重要であること、特に、ライフ・スキル教育が少女の夢の実現に欠かせないことを指摘しました。私の活動の一つである児童労働は、教育への障害要因でありますが、教育が児童労働撤廃への有効な手段でもあるので、私自身、特に効果的な教育の実施に関心を寄せています。
この会議の、特徴的で、極めて有意義だったのは、2日目の午前中を費やした、ワーキンググループです。ワーキンググループは、5テーマ(①女性の完全・効果的な参加及びリーダーシップの平等機会、②全女性・少女に対するあらゆる形態の暴力の撤廃、③よきガバナンスと法の支配、④紛争における女性の権利の保護・推進、⑤紛争予防の様々な側面における女性の参加と代表)で設けられ、少人数に分かれて参加者が自由に意見交換を行いました。少人数というものの参加者が多かったために、時間が短かすぎたのが残念でしたが。私は、「よきガバナンスと法の支配」に参加しました。平等参加、透明性、説明責任、アクセス可能性、ジェンダー主流化などの基本原則を再確認した上で、強調されたのは、クオーターの先を行く、「ジェンダー・パリティ」、社会監査など、極めて先進的なものでした。各国での課題、特に法や原則の実施の課題を各自の経験を基に意見交換ができたのは、私の今後の日本での学術・NGO活動に大変有益でした。
国際会議は、会議のテーマについての最新の知見の交換や、より良き将来に向けての原則・アクションの樹立が大きな目的と考えますが、もう一つ重要なことは、ネットワークの構築です。後者について、今回の会議で、特にアジア地域の女性活動家と知り合いになれたことが、これからの私の活動の推進・拡大に大きく役立つことは、言うまでもありせん。めったに会えない、アジアの友人と本会議で再会できたことや、会議の出席者を通して久しく音信不通になっていた友人の消息をつかめたり、かって住んでいたバンコクに訪れる機会を持てたことも、嬉しいことでした。会議にご尽力したすべての関係にお礼申し上げます。

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