第33回セミナー「19世紀イスタンブルの演劇空間」
今回は、オスマントルコ研究の第一人者でいらっしゃる永田雄三先生に、先生が近年ご関心を持って研究している、19世紀末~20世紀初頭のイスタンブルの演劇についてご紹介いただきながら、トルコと西欧の文化接触の過程についてお話し頂きました。
カラギョズ、オルタオユヌなどの伝統演劇について、画像や動画の資料もたくさん見せて頂き、あまり注目のされてこなかった大衆演劇への西欧の影響を順をを追ってみて行くことが出来ました。
要旨:
イスタンブルを中心としたトルコの伝統演劇と19世紀末から20世紀初頭(いわゆる世紀末)おける西洋演劇の受容のあり方をテーマとしつつ、西洋と東洋(とくにイスラーム世界、トルコ)の文化接触の様態について語りたい。その際の問題意識は、西洋と東洋を二項対立的に理解し、とりわけ「進歩と文明の西洋」vs「停滞と野蛮の東洋」(脱亜入欧)といった、明治維新以来の日本人の歴史観と世界認識を批判し、東洋と西洋の連続性ないし相互補完性を主張したい。
講演者プロフィール:
1939年 東京都墨田区に生まれる
1964年 千葉大学文理学部史学科東洋史専攻卒業
1964年 慶応義塾大学大学院文学部史学科修士課程入学
1965年 イスタンブル大学大学院文学部史学科博士課程入学
1969年 同上大学院博士課程修了(Ph.D)、慶応義塾大学大学院修士課程修了
1970年 財団法人東洋文庫奨励研究員(のち研究員、現在まで)
1971年 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 助手
1988年 同研究所 教授、トルコ歴史学協会(TTK)連絡会員(Haberleşme Üyesi)に選出される
1995年 同上研究所退官、明治大学文学部教授赴任
2009年 同上大学を定年退職
主著(含む共著)
『中東現代史I トルコ・イラン・アフガニスタン』山川出版社(世界現代史11)1982年(共著)
『西アジア下』朝日新聞社(地域からの世界史8)1993年(共著)
Tarihte Ayanlar: Karaosmanoğulları Üzerinde Bir İnceleme(トルコ語:歴史の中のアーヤーン[地方名士]:カラオスマンオウル家に関する研究)トルコ歴
史学協会、1997年
『成熟のイスラーム社会』中央公論社(世界の歴史15)1998年(2008年文庫版)(共著)
『西アジア史II イラン・トルコ』山川出版社(新版世界各国史9)2002年(編著)
『前近代トルコの地方名士:カラオスマンオウル家に関する研究』刀水書房、2009年
『世紀末イスタンブルの演劇空間―都市社会史の視点から―』白帝社 (2013年予定、共著)